旅行・地域

2018/12/31

細道 (2)


(前回からつづく)


これまで遠出したうち強く心に刻まれたところだけでも地図に落としてみる。備忘録にと思って始めたことが、行程をあらためて地図にプロットしてみると、距離感だとか位置関係だとかが一目瞭然となってずいぶんと理解しやすくなった。やってみるものだ。そしてやっぱり元来の地図好きを再認識。


…………………………


ということで、幸いまだ好奇心が枯れ切ってるわけではなさそうだ。そしてまだまだ知らないところはたくさんある。関東の歴史なんてのはせいぜい家康がやって来たちょっと前の江戸時代からで、一部に頼朝が始めた鎌倉時代があるくらいだろうとタカをくくっていたのだが、いやいや全然そんなことだけではないというのが分かってくる。


江戸のある東京湾にしても、鎌倉のある相模湾にしても、華の臨海部は今も超高層ビルやらインバウンド観光やらでギンギンに人を引きつけているが、これも考えてみれば天下統一の幕府を置くことになってやおら急造されたいわばニュータウン。


これに対してそこから一歩山に向かって進んだ内陸部は、いまだに「武州」と呼ばれてあちこちに子供たちの道場があるくらいに気骨のある土地柄。古墳時代からの史蹟もあちこちにたくさん遺されていたり、さらにはもっと以前、秩父の山あいのように創建から2千年をこえる神社やら伝統芸能やらがまだ脈々と生き抜いていたりと、ひっそりでも古い歴史を今に伝えている地域が山ほどある。


こうしてみると関東と一口に言ってもやっぱりずいぶん広いらしい。そして教科書に書かれているような天下統一の変遷、つまり勝ち組の目でさらりと表面をさすってみるだけではどうやら歴史の深いところ、フツウの人たちの喜怒哀楽の営みだったり、風土の奥底に眠らされた微妙な襞だったりまでを触れることにはならないようなのだ。海側と山側と、何でもそうかもしれないがやはり両側から複眼でとらえていかないことには本当のところは浮き彫りになってこないらしい。


…………………………


さて、こうしてるうちにも1年が終わりまた新しい1年がやってくる。今年は少しペースが落ちてしまったが、それでもまた自分の無知ぶりに気づかされながらも温故知新、来年からもまた1つまた1つと気のおもむくままに訪ねてみることにしよう。そこそこの電車賃を握りさえすれば誰に頼るでもないから自由だ。ぼやぼやしてるとそのうち脚も動かなくなってしまいそうだから、そうなれば元も子もない。


そんなこんなで、ふと思い立って始めることになった「音の細道」、最初は九州~四国~瀬戸内~山陰~近畿の西日本、そしてその後は関東を中心に歩いてきたが、早いものでもうこれでかれこれ通算10年になる。キッカケは「洋の前に今一度足もとの和を」ということだった。そしてそんなことも含めてその時々を書きとめてきた徒然日記、これもかれこれもう10年になるのだからよくも続いたものだ。ただこれも思いのままに書き散らかしてきただけだから、いつの日か読み返してみたなら、へえ?とニタニタ笑ってしまうかもしれない。


はて、この鈍くさい亀の歩み、果たしてどれだけ自分の血となり肉となったかは分からない。いつになったら分かるのかも分からない。いつかそれがなにがしかの音になってくれるのかも分からない。そしてこんなことだってそんないつまで続けられるのかだって分からない。そんな分からないこと尽くしのなかでとりあえず言えることといったら、今のところはこの細道に迷い込んではいなそうだぞということ、そして幸いなんとかこの先もまだ果てずには済みそうだぞということ、どうやらそんなことぐらいらしい。ということでいよいよ近づいてきたカウントダウン、皆さまもよいお年を。


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2018/12/30

細道 (1)



長らく雑然と積み重ねるだけだった旅の資料を片づけることにした。いつからだろう、何かに構わずそのまま残してきたからずいぶんと溜まっていて、さすがにここいらで整理しないことにはそれが重荷になって前に進めなそうな気がしてきたからだ。紙もいいがそれよりはもっと記憶を信じる、そして仮にその記憶にも残らないような事であれば忘れたっていい、どうやらそのくらいの覚悟が必要らしい。


ただ、こうして年末も押し迫ってくると不思議なものでやっぱり来た道を振り返ることになるようだ。捨てるにも1枚1枚思い出してはいちいち読み返してみたりするからさっぱり手が進まず一向にはかどらない(笑)。そしてそんなことをしてるうち、あれ?そういえば関東へ来て何年になるだろう?ふとそんなことまで思って数えてみたら、なんとこれが早いものでもうすぐ5年になろうとしている。


……そうか、5年といえば大学ならとっくに卒業してる長さだ。アッというまの月日の経過に今さらながら驚いてしまう。待てよ、それにしても同じ5年でも昔と今とでこんなに違うのはなぜなんだろう?17で東京へ出てきたあの頃に比べると確かに1年のスピードがやけに早く感じる。どうしてだ?……というわけでまたそこで手を休め(笑)よくよく考えてみることにした。


…………………………


すると、そういえば学校や職場にいた時には進級だとか定期異動だとか、明確に年単位の区切りというものがあったよな。あと、人の関係にも先輩後輩というのがあって、1級上だとか1期上だとかいうふうにわずか1年の違いでも大きく意識せざるを得ないそんな環境があったよな。そうだ、それから学校では履修課程、職場では業務分担、4年なら4年のなかでの1年1年にそれなりの位置づけというものがあって、その1年にも大まかに見通せる年間スケジュールなんてのもあったっけな。……なんてことがあれこれ思い出されてきて、そう考えてみると1年というものの単位、これを日々のなかで否応なく意識させられるそして良くも悪くも重くのしかかる、どうやらそんなふうにしながら暮らしてたらしいのが分かってきた。つまり「1年」がきっちりと与えられていたのだ。


それが今はそんなメリハリめいたものは一切ないから、要は他律的に自分を測るものがない。結局のところ、良くも悪くも計画するところからそれを評価するところまですべては自分次第ということになっていて、となれば、だからこそ何の縛りもないぶんそうした自由を存分に謳歌していけるのだが、その反面、これがひとたび油断しようものなら、誰に言われることもないからどうにでもダラダラできてもしまう。


そうか、なるほど!……何を今さらという感じもするが(笑)、「1年」を早く感じてしまう裏にはどうやらそんな事情が隠れていたようなのだ。ちなみに、季節のそれぞれの節目の感じかたなんかも同じことらしい。以前は歓送迎会やら忘年会やら御用納めやら、そんな組織的なイベントをキッカケにしながら刻んでいることがほとんどだった。それが今ではサクラとかツツジとかアジサイとかサザンカとか、はたまた花粉とか梅雨とか積乱雲とか刷毛雲とか、人を介するやり方ではなくてもっぱら風物との直接対話ということになっている。


そしてもうひとつ、あれやこれやを吸収するスピードというのもさすがに落ちているらしい。あの頃はわずか1年の間でも、学業であれ仕事であれそして趣味であれ、膨大な知識と体験を短い間にどんどん入れることができた。黙っていても次々と外から押し寄せてくる刺激、それらをこなしていくなかで知らず知らずのうちにまわりの風景もどんどん変わっていって、それに引っ張られるように自分もあれよあれよ前に進んでいるのがハッキリ実感できた。要は何か自分を押してくれるものに乗っかれていたことでそうなっていたのだと思う。そしてそれよりも何よりも、そうしていけるほどにまだ頭も心もずいぶん柔らかかったのだと思う。ただ、まあこればかりはやむなしだ、人の盛衰曲線というもの、おそらく太古の昔からそういうことになっているのだろう、だから今はもうあまり無理はしない(笑)


それでもこの5年、何もしなかったかというとそんなわけでもなくて、ここ関東の歴史と風土を見てまわろうと折を見てなるべく出かけるようにしてきた。ただ、子供のころからこれでも記憶力には自信があったほうなのだが、これもさすがに最近はどうやら少しずつ翳りが見え始めているらしく、いつどこへ行ったかの前後関係、これがずいぶんと怪しくなってきた。


…………………………


そんなこともあって、それならばとそれこそ誰に言われたわけでもないが、これまで遠出したうち強く心に刻まれたところだけでも地図に落としながら整理してみることにした。


◾️2014. 7「府中」
(武蔵野線~中央線~青梅線~八高線~川越線~東武東上線)

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◾️2015.11「長瀞~秩父」
(東武東上線~秩父鉄道~西武秩父線~西武新宿線~武蔵野線)

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◾️2015.12「富士吉田~御殿場」
(武蔵野線~中央線~富士急行~富士急バス~御殿場線~東海道線~京浜東北線~武蔵野線)

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◾️2017.10「高麗川~巾着田」
(東武東上線~川越線~八高線~西武池袋線~武蔵野線)

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ほかにルーツである信州への遠征も何度かあったが、これはやっぱり距離がありすぎて地図からハミ出してしまうのでやめにした。


…………………………


備忘録にと思って始めたことが、こうして行程をあらためて地図にプロットしてみると、そこまでの距離感だとか全体のなかでの位置関係だとかが一目瞭然となってずいぶんと理解しやすくなった。やってみるものだ。そしてやっぱり元来の地図好きを再認識。この調子でいずれ今度はこれまでの生涯の旅をすべて日本地図に落とし込んでみよう。どうなるだろう楽しみだ。空白地帯もハッキリと見えてくるはずだ。


そしてこの作業をやってみてよかったもうひとつは、こうして眺めてみることで東よりは西方面のほうに興味があるらしいのがわかってきたことだ。それはつまり海側より山側ということになる。なんだろうと思ってみるのだが、ひょっとするとルーツが木の実を採って暮らす山籠りの縄文人で、そんなことにも関係しているのではなどと思ったりもする。


はたまた、あの西遊記で有名な玄奘法師が向かった「西方浄土」(浄土の世界は西にあるという思想)、どこかにそんなところへの憧れみたいなものがひょっとしてあるやもしれず、どっちにしてもなにがしかのDNAが呼び覚まされているような気もしてきて、そう考えるとなんだか不思議でゾクゾクしてくるのだった。


(つづく)



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2018/11/06

誘導



あの相手に独り立ち向かう
なんだろう指揮者みたいだ


それでいて目立ちはしない
観客は自分ひとりっきりだ


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いろんな仕事があるんだな


黒子はやっぱりカッコいい
黙々と裏方の務めを果たす


機長ばかり人気があっても
こういう人もいないと困る


好きだな、やってみたいな
いやいや、そりゃ無理だ(笑)


やっぱりここは子供たちだ
次の時代を担うのは彼らだ


目先のカッコに捕らわれず
彼らに頑張ってもらわねば


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……なんてことを思いながら
時間を忘れ見入っていたら


「お客様、搭乗の時間です」


ありゃ、これはすんません!
余計な心配をさせてしまった


そうか、この人も裏方かぁ…
いや、感心してる場合でない


誘導されるまま搭乗口へ走る
なんだ!?あの飛行機みたいだ


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(※白いのはボカシでなくシャッターミスでした)



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2018/11/04

足音



道南の紅葉、例年と様子が違っていた

どうやら台風の塩害でやられたらしい


それでも文句ひとつ言わずそこに立つ

そのうちすぐ初雪、来年はどうだろう


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そして離陸、眺めるうち夜景が現れた

空気がキリッと澄んでくっきり綺麗だ


この窓に収まる範囲に30万人が暮らす

ここもじき真っ白に包まれるのだろう


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2018/11/03

生業



故郷には海も山もあって
親戚に漁師も農家もいた


街なかからは遠かったが
歩いてよく遊びに行った

思えばふらふら放浪癖は
この頃から始まっていた


船に一緒に乗せてもらう
畑で一緒に土いじりする

魚の押さえ方を教わった
大根の抜き方を教わった


もう遥かむかしのことだ


…………………………


今はどうなってるだろう


道を思い出しながら歩く
街は変わって面影はない

あちこち空き地も増えて
住宅もみな新しくなった


景色というのは不思議で
こうなると見知らぬ街だ

なんだかなぁと思いつつ
そのうちそこへ辿り着く


おそるおそる覗いてみる
すると……おお、同じだ!


変わらない風景が現れた


…………………………


まだそうだったかと驚く
なぜだか打ちのめされる


世の中が変わったからか
自分が遠ざかっただけか


風に乗って海の匂い

雨が降って土の匂い

家があって人の匂い


こんな頭でっかちになっても
なぜか匂いだけは憶えている


ここにあるのは確かな風景
忘れかけてた身体の暮らし


この匂いに溶け込むとすれば
それは一体どんな音色だろう



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2018/11/02

珈琲



函館珈琲めぐり



【ひし伊(宝来町)】


質屋の蔵だったとのこと
そうか、うちも質屋だった(笑)

どっしり古く重厚な建築
1階は椅子、2階はくつろぎの畳

高田屋嘉兵衛、市電、函館山…
静かにclassic、落ち着く


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【○○○(弥生町)】


こちらは肩肘張らない隠れ家

人知れずゆるく営業ゆえ
店名は乗せない約束(笑)

高島屋珈琲のドミニカを試す
酸味のキレと奥に残るコク、旨い

弥生小学校、親子連れの弥生坂…
静かにjazz、落ち着く


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2018/11/01

夢幻



どこからか暗雲がやって来て
ビュンと突風、バシバシと雨


かと思えば、あっけらかんと
見違えるほどのスッキリ青空


くるくる変わる不安定な大気



するとそれをなだめるように
海の向こうにうっすらと虹…


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みるみるくっきりと姿を現す


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おお!美しすぎる!うっとり
こんなパーフェクトは久々だ


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………が、それもほんの束の間
瞬く間に消えていなくなった



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2018/10/31

前線



雲の上はまったく別世界

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降下が始まり雲海に突入

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分厚い雲に暫しぐらぐら

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なんとか潜り抜けると
あれは下北半島突端、大間だ

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そして僅か8分で海峡越え
雲の下をくぐって渡島半島へ

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このえらく不安定な空、前線のいたずららしい

着陸できたのはいいが、しばらくは続くという



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2018/08/18

機上



函館にもう一泊、朝6時に目を覚ますとあの嵐はどこへやら、さいわい風も止んで雨もあがっている。窓から大森浜を眺めてみると、ずいぶん荒れたからまだ海は濁っているが、それでも波はおさまってるようだ。これだとなんとか飛行機は飛べそうだ。


機上



外に出ると地面は濡れ、軽い物とか折れた枝やらが転がっている。16~17日にかけての低気圧通過、やはりあちこちに痕跡を残したようだ。


機上



駅前の「夏の妖精」はといえば、あの雨風もなんとか耐え忍んだらしく、変わらぬ笑顔で迎えてくれた。


機上



ということで昼前には函館空港を離陸。すると、すぐ下に根崎のラグビー場と湯の川温泉街を見ながら、ついさっきバスで通った海岸通に平行して機体はどんどん上昇。競馬場・競輪場、五稜郭、……はっきり見える。


機上



そのうちにあの大森浜が見えてきて、あ、駅だ、あ、市役所だ、あ、函館ドックも……


機上



さっきあそこを歩いてたのに、そこを1時間後にはもうこうして上から眺めているのだからやっぱりおもしろい。何回経験しても不思議でワクワク、愉しくなってしまう。


…………………………


そしてわずか1時間、秋田~山形~福島~茨城のコースを辿って、眼下に鹿島スタジアムが見えたと思ったらもう着陸体制だ。


下にしっかり利根川が見える。茨城と千葉の県境だ。この辺りは水郷だから潮来も。後方にはうっすら霞ヶ浦、そしてその向こうに筑波山、あの辺りは土浦だろう……なんだか愉しい、得した気分だ。飛行機の反対側の窓にはすぐ下に銚子の街と犬吠埼が見えてたはずで、これは惜しかった!


機上



根っからの地図好きだからだろう、家や街を、山や川を上から見渡すのが好きだ。そして本物がこうして地図どおりだと興奮してワクワクしてしまう。別に伊能忠敬さんを信用してないというわけでもないのだが、どうしても他人が作り出したフワフワした観念を実際にこの目で実物と照らし合わせてガッチリ安心したくなってしまうのは、どうやら生まれつきの性癖のようでこればかりはどうにも止まらないらしい。おかげでどんなに疲れようが眠かろうが機上ではお目々バッチリ、爛々になってしまうのであった。窓の外ばかり見ているせいか嘘みたいだが本当の話、降りる頃には体が片一方にネジ曲がっていて、矯正しなければならないほどだ。


ということで飛行機を降りるやラジオ体操、……するとあれ?、あの命にかかわる蒸し暑さはどこへやら、わずか数日なのに、なんと秋すら感じる爽やかな空気が迎えてくれた。




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2018/08/17

営々



きのうは半年ぶりの函館
あいにく目が覚めると雨


これが夜にはどしゃ降り
大雨警報、洪水警報……
エリアメールまで鳴った


荒れる予報は出てたので
その前に動こうと朝7時
路線バスに乗り船見町へ


降りて2ヶ所墓参りする
風も強くて傘がきかない
なんとか線香だけあげる


早々にお参りを済ませて
帰るのは市電にしようと
ドック前の電停まで歩く


…………………………


近くの公衆便所で雨宿り
20分ほどでガタンゴトン
やっと電車がやって来た


これから出勤なのだろう
乗客は自分のほかは2人
採算がすこし心配になる


そしてガタンゴトン出発
これがルーティンなのか
函館山の裾を淡々と走る


おしゃれでも何でもない
ひっそりとただ走るだけ


乗り降りする人もそうだ
当たり前に移動するだけ


出会ったのは半世紀も前
今も営々と続く市民の足


函館市電は妙に落ち着く
気取らない生活感が漂う


営々

営々

営々



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