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2018/06/13

純真



ラジオからこれが流れて、ふと懐かしく聴き入ってしまった。


ビゼー作曲、組曲「アルルの女」


この曲を初めて知ったのは小学校を卒業してすぐの中1の春、部活の先輩の家でだった。親が大工さんでその作業場の2階の部屋に遊びに行ったらレコードがある。歌謡曲のなかにクラシックも何枚かあってそのうちの1枚がこの「アルルの女」だった。17㎝ EPでせいぜい15分ほど、いわゆるドーナツ盤のレコードだ。


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「アルルの女」……このタイトルも、口に出してみると上から下へと一気に「タタタカタンタ」……まずリズムがいい。そして途中に挟まれた「ル」の連続、これがまたエキゾチックで憶えやすい。そして舌が転がるところが心地いい。そういえば、当時「ルル3錠♪」という風邪薬のテレビCMもあって風邪以上に流行っていた(笑)


もうひとつ、この「アルル」。これがいかにもフランスらしい響きでヤられてしまった。フランスとの関係は前にも書いているが、幼稚園の仲良し神父さんがフランス人だったことから始まって、なぜか知らず知らずのうちに他人事とは思えないようになっていたからなおさらであった。


そして「……の女」。これがまたそそる(笑)。ちょうどこのジャケットのデザインがフランス人だろう女性が全裸で寝そべっている絵だった。ルノアールか誰か印象派のコピーだったのだろうが、あの真っ白で豊満な姿態がまだ瞼に焼き付いているのだから、いま思えばあの頃はずいぶん純真無垢な少年であった。


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というわけで、このドーナツ盤を袋から取り出してポータブルプレイヤーのターンテーブルに乗せる。真ん中の穴のところにキャップを置いて固定する。回転数のスイッチを45に合わせる(30㎝LPは33回転、17㎝EPは45回転。これを間違えるとズッコケてエラいことになった)。すると、ターンテーブルがぐるぐるまわり出す。最初はゆっくり、徐々にスピードが上がる。安定走行になるのを待ってアームを盤面の位置に合わせそっと針をおろす。


◾ビゼー/アルルの女 第2組曲
「ファランドール」
https://youtu.be/BAyJovBpABA

◾同「メヌエット」
https://youtu.be/vWZA1rb0s30


今あらためて聴いてみると、なんだかチャイコフスキーに似たところがあるのに気づいたりして驚く。影響されたのか或いは及ぼしたのか、どちらかは分からないが同時代だからこの2人には関係があったのかもしれない。確かに、この19世紀中盤の時代というのは(日本ではちょうど幕末の動乱から明治維新、文明開化とやらで鹿鳴館で真似事を始めた頃)、向こうでは交響曲や協奏曲といった型式だけでは飽き足りなくなってか、バレエやオペラなどストーリー性のある曲を扱う人たちもずいぶん多くなっていた。ワーグナー、ムソグルスキー、リムスキーコルサコフ、リヒャルトシュトラウス、……


…………………………


ちなみにビゼーといえば、あの有名なオペラ「カルメン」も作曲している。これはこれでやっぱり中1の秋だったか、函館で公演があるというので友達2人とわざわざ鈍行列車に揺られて観に行った。場所は千代台にあった中央中学校の体育館。当時はまだ市民会館ホールができていなかった。


この会場の配置のおかげでオケのすぐ横で聴けたのがよかった。初体験のナマだったからよけいに震えた。指揮者になる夢がますます煽られた。それに地鳴りのように歌って踊る歌手たちの迫力、そして主役カルメンの奔放さ、魂を揺さぶられてずいぶん興奮したのをきのうのことのように思い出す。


それを引きずっていたのか、会場から函館駅までの帰り道、頭から離れないメロディを3人でふざけながら大声で歌いダラダラ歩いていると(電車賃の節約だった)、もう夜も遅かったからか昭和橋あたりの交番のおまわりさんに呼び止められて職質、なんだかわけもわからぬまま名前と学校を書かされた。翌日学校に行くと担任に呼び出され、……なんと通報されていた(笑)


まあ、そんなことがありながらも帰りの夜行列車のなかでは今度は札響のメンバーのおっさんたちと偶然相席。降りるまでの4時間ずっとさまざま質問攻めにして、疲れているところを眠らせず(笑)遠慮なしに話を聞いたりしていたのだから、いま思えば田舎少年でありながら、いやそれだからか、ただただ音楽というものに憧れ夢中になることができていたそんな少年時代だったのだと思う。あれはあれで希望に満ちた真っしぐら青春だったのだよな、なんてことを蘇えさせてくれるそんなビゼー、はて、あの時のようにもう一度でいいから心を無垢にできないものかと今また真剣になって聴いている。


純真

これは、ゴッホの「アルルの女」


純真



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