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2017/08/14

盛衰



戦後まもなく 1950年代の好景気
朝鮮戦争を経て高度成長が始まる

我々が今あるのもきっかけは軍需
誰も口にはしたがらないが事実だ


…………………………


考えると自分の実家もそうだった
行商から始めてどんどん波に乗る

物が溢れ場所が足りず蔵を建てる
豪商というわけでなく簡素なもの


質屋は庶民が気軽に通う一六銀行
みな当座を凌ごうと物を持ち込む

その後、飛行場の改修で人が入り
また足りなくなりもう1つ建てた


…………………………


ひとつの蔵には
着物、背広、革ジャン、布団、…

入ると樟脳の匂いがツン鼻を突く
預かるものにとって防虫は生命線


もうひとつの蔵には
ラジオ、テレビ、冷蔵庫、掃除機、
カメラ、ステレオ、バイク、…

電気製品は次々と新しいものが…
この国の勢いを目の当たりにする


…………………………


そういえば、楽器もよく預かった


ハワイアンで使うスチールギター
マヒナスターズが流行ったからだ

その次は、テケテケエレキギター
これは勿論ベンチャーズの登場だ

意外と多かったのがあのウクレレ
漫談の牧伸二がテレビで大人気に

次は、テナーサックスとフルート
ブルコメ井上忠夫がかっこいいと
買ってはみたもののすぐ売る人(笑)


ほかアコーデオンやガットギター
そんなことからか楽器には憧れた

なかでも木管楽器は心ときめいた
キーがメカニックでキラキラ輝く

これが後の吹奏楽への扉になった
が、あてがわれたのはチューバ(笑)
希望は通らずに我慢の時代だった


…………………………


横道にそれたが、そんなわけで
質草を蔵へよくとりに行かされた

小学校にあがってまもないチビが
デッカい鉤型の錠をもって向かう


夜なら懐中電灯をもちながら探す
荷札の番号と名前を照合するのだ

なにしろ、棚という棚に山積みだ
見当たらないと言えばどやされる

そしてこの蔵ほかにも応用された
悪さすれば真っ暗閉じ込められる


…………………………


そんなさまざま預けられる質草も
3ヶ月でとりに来なければ質流れ

流れ品は今度は古物商として売る
売れなければそのぶん貸し倒れだ
よく売れたのはカメラ、腕時計だ


そんな流れ品を毎朝店先に並べる
並べ方も見て欲しくなるよう工夫

それから朝飯をかっくらって登校
寝坊すれば朝飯を抜いても並べる

別に小遣いひとつくれなかったが
一度だけ古びた腕時計をもらった


…………………………


その質屋も1970 年代に入る頃には
先行きに暗雲が立ち込めはじめる

手軽なローン購入がどんどん普及
そして皮肉にも公的福祉の充実……


月利9%は見向きされなくなった

あれだけ全国で隆盛だった質屋も
そんな動きに流されてどこも廃業


…………………………


実家も客がなくなり看板をおろす
この半世紀、蔵も空っぽのままだ

もうしばらく中に入ってないから
今はさながら動物園かもしれない

いずれ解体しなければならないが
なかなかキッカケを掴めずにいる


あんな大車輪で活躍していたのに
今はひっそりすまなそうにしてる

暮らしを支えてくれた大スターが
なんだかえらく小さく見えてくる

そんな姿を晒すことでこの蔵たち
戦後この国の盛衰を教えてくれる


盛衰



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